美容業界の先駆者に聞く「美容師として生きる」〜その2『Double/SONS 代表 山下浩二編』〜
「うまい美容師」を生涯の目標に
つくる作品やお店の展開など、あらゆる角度から 全国の美容師の注目を集めている山下浩二さん。長きにわたり活躍し続けている山下さんの美容師魂を紐解きます。
Double/SONS 代表 山下浩二
1961年6月16日生まれ。鹿児島県出身。高津理容美容専門学校卒業。大阪、鹿児島、東京のサロンを経て1994年、東京・原宿に『HEARTS』、2001年表参道に『Double』をオープン。現在は2店舗を展開中。2023年にはold music bar「The Moon Under Water」をオープン。2011年、JHA大賞部門準グランプリ受賞。BLUE NOTE TOKYOでのヘアショーや、渋谷ヒカリエにて「HEARTS Growing up+」、「THE STAGE」を開催。常に業界をリードする存在として走り続けている。
20代の美容師へ
練習と遊び、両方やろう
僕がアシスタントの頃は練習ももちろんしましたが、どちらかというと遊びのほうが忙しく(笑)、辛いのは仕事ではなく時間がないことでした。今の20代がすぐに辞めたり、美容師が苦しいと感じてしまうのは、練習時間が長すぎるからのような気がします。練習するなと言うのも変な話ですが、1人で練習ばかりしたっておもしろくないですよね。結局、実践の場で経験を積むほうが1人レッスンの数十倍早くいろいろなことが身につくと思うんです。練習好きであること自体はよいことですが、先輩と一緒に遊ぶことも同じくらい大事。音楽を聴いたり、クラブに行ったりしてセンスを取り入れてほしいですね。若いうちは流行りものは勝手にインプットされるでしょうから、それ以外のセンスを取り入れてください。練習のしすぎで疲れてしまい、営業中に元気がない、そんな「現場に弱い」人になってはいけません。覚えるべきことは集中して一晩で覚え、現場で勝負しましょう。
30代の美容師へ
自分を伸ばす大事な時期
30代ではまだ人を育てられないですし、人のことを考えていたら絶対にうまくいきません。とにかく自分を伸ばすときです。人と違う才能を発揮し、自分の強みはこれだ!と思えるものを見つける時期だと思います。そうはいっても自分の成長のためには下の子に仕事を教え、育て、スムーズに自分をアシストしてもらう必要があります。下の子を育てようというより、自分のために教える気持ちを持つことです。下の子は自分が頑張っていれば自分を見て盗み、自ずと成長します。ダメな先輩にならないよう、自分を成長させることが大切です。30代でスターとなり、腕を一段、他の人より上げないと、この先、人を育てることはできないでしょう。僕は30代で独立し、自分の道を切り開きました。30代は心身共に充実し、いちばん働ける時期。20代はまだ体も頭も完全にはできあがっていませんから、30代こそがブレイクするときです!
40代の美容師へ
ビジョンを確立し、継承する
40代になると自分の才能に気づき、ビジョンが見えてきます。 経営者には低価格にして客数で勝負する人、1人十数万円という超高価格にして付加価値で勝負する人など、いろいろな考え方があると思いますが、僕は、自分が理想とする「速い、うまい美容師」となり、楽しく仕事をするためには食べていけるちょうどいい料金にすればいい、という考え方。お客さまにはいろいろな選択肢がありますが、「お客さまは神様」という時代はもう終わりだと思っていて、美容師はお客さまに選ばれますが、自分たちもお客さまを選び、自分がやりたいことを貫ける店づくりを大事にすべきです。そのほうが毎日仕事が楽しいですよね。ただ、それには確かな技術が必須です。そして50代に突入するまでに信頼できる弟子を何人か育てあげ、自分のビジョンを継承していくことも大切です。 辛いことがあっても我慢していれば少しずつステップアップできます。僕は50歳をすぎてようやくカットがわかってきました。とにかく辞めずに続けましょう。
column: 「ブルーコーム」の復刻版
僕が美容師になりたての頃に使っていた「ブルーコーム」が生産中止となり、どうしても欲しかったので製造会社に許可を取り、僕の手元にある最後の1本を見本に自分でつくりました。お店のロゴも入っています。歯の間隔が絶妙で、このコームで髪をとかすと髪がツルツルになるんです。スタッフみんなで愛用しています。
美容師を継続するための3つのルール
1.技術を学び続け、少しずつ成長する
2.趣味の世界を大切にし、センスを磨く
3.自分のビジョンを確立し、生涯、貫く
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