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美容業界の先駆者に聞く「美容師として生きる」〜その1 『HEAVENS 小松敦編』〜

HeritageInc·2024.3.18
美容業界の先駆者に聞く「美容師として生きる」〜その1 『HEAVENS 小松敦編』〜

働き方の多様化や、情報の氾濫、ブランディングにも変化があり、美容師にとって自分が進むべき方向に迷いやすい時代かもしれません。自分なりのブレない芯が必要な今、美容業界の匠たちに今も昔も変わることのない“美容師の本質”をお聞きしました。キャリアに寄り添ったアドバイスをぜひ参考にしてみてください。

 

「最速」を求めて慌てなくていい

日常の中で成り立つクリエイティブ=「リアリティブ」の 第一人者でもある小松 敦さん。40年以上サロンワーカーであり、 クリエイターであり続ける小松さんからの 熱いメッセージをお届けします。

HEAVENS 小松敦

1959年生まれ。山形県出身。日本美容専門学校卒業。1993年に東京・表参道に『ヘブンス』を設立。現在、グループブランドで表参道に3店舗と代々木上原に1店舗を展開する。1999年JHAロンドン審査員最優秀賞、2000年JHA大賞部門準グランプリ受賞。近年ではヘアデザインの表現思考「リアリティブ」を提唱し、美容業界のオピニオンリーダーとして、その発言にはいつも注目の的。

 

20代の美容師へ

急がば回れ!じっくりと経験値を積むこと

20代は現実的な経験値が少ないのでたくさんのことを身をもって経験することが大切です。たかが髪の毛だけど、されど髪の毛。美容師は人の生活全般に関わる仕事です。「美しい」「きれい」というように「その人を表す」という意味で、生活の中にリアリティのある幸福感をつくることができる。そんな仕事だから、いろいろなことを知っていたほうがいいんです。美味しいものを食べたり、アートや写真を観たり……。実際に触れると、想像をかき立てられ、思考がどんどん広がっていく。そんな可能性を塞がないでください。今の若い人は非常に合理的で、それが正しいことかのように「最速」という言葉を使いますが、長い人生の中で「他人の価値観」に左右されるような最速には意味がありません。これははっきりと言い切りたい。20代は美容師を続けることを前提にひとつの環境に身を置いて過ごした方がいいと思っています。決断するのはそれからでも決して遅くありません。もし「辞めたい」「店を移りたい」と思うようなことがあれば「ここでやり切ったのか?」と自問してください。すべてやり尽くしたと言えるのならそれでいいけれど、僕だって「まだまだ」と思うことがあるわけだから、20代は易きに流れることなく、酸いも甘いもゆっくり、しっかり味わってください。

 

30代の美容師へ

仕事とは評価を受けることだと理解すべし

30代は仕事での成果が求められる年代。売上げや表現力が問われます。売上げは言わずもがなですが、表現力とは人に伝えることであり、スタッフ教育もしかり、お客さまに対する接客・店販も然り。20代で培った知見をベースに、30代は現実的な成果を出すとき。自分の技術やセンスに値段がつく=価値があると実感できるかどうかなのです。「稼ぐ」ことは、評価を受けることです。すべての仕事は評価を受けることだと理解してください。そのうえで自分のすぐれている点を見つけ出す時期でもあります。うまい人、売れている人がたくさんいる中で、違いをつくらないといけない。万能と言われる人であっても、得手不得手があって、すべてにおいて平均点という人はいないはずです。そんなとき、サロン=チームで働くよさが出てきます。お客さまが指摘してくださることはごくまれなので、先輩たちの成功や失敗を共有してもらって、それをも自分の経験値とすることで、ひとりで働くよりも速いスピードで成長できるでしょう。

 

40代の美容師へ

経験を総動員して先を見据えた人生設計を

40代に入ると50代、60代、さらにはその先を見据え、人生設計をする年代です。シビアな判断を迫られるでしょう。現状のまま働き続けるのもいいだろうし、自分のスタイルがはっきりしているのなら、独立を含めてなんらかの形をつくるのもいいでしょう。がむしゃらだった20代、30代を経て、40代は冷静に判断して、人生設計をする必要があるでしょう。

僕は45年ほど美容師をやっていて、同じぐらいの年月お付き合いしているお客さまがいます。最近はそんなお客さまから「小松さんがハサミを置いたらどうしよう」と相談されることも増えてきました。そんなときは「僕でなくてもスタッフがいるから安心してください」と引き継ぐことも。自分やスタッフ、店の将来だけでなく、お客さまの将来も背負っているわけです。その責任感を持って、経験を総動員して判断してください。

 

column: 気持ちが高揚する憧れの存在

昔からの憧れであり、仕事でも愛用しているライカ。1台のカメラに数百万の値がついているのは、でき上がるまでに携わる職人たちの人生を担保しているからだと受け取っています。職人たちが何十年もの歴史の中でベターではなく、ベストな形にたどり着いているモノそのものの美しさはもちろん、変わらないポリシーがあって、いつも高揚させてくれます。

 

写真家・森山大道氏は僕が写真好きになった発端の人です。かっこいいと思う海外のフォトグラファーもたくさんいるけれどやっぱり身近。実は街に貼り出していたHEAVENSのポスターを写真に収めて、作品にしてくれたことがあって、本当にうれしかった。人間の目には見えないモノクロの世界が想像をかき立てます。年齢を重ねても変わらないスタンスは永遠の憧れです。

 

美容師を継続するための3つのルール

1.その瞬間に感じたことを大切にする。考えるな、感じろ

2.信念を貫く以上に、リニューアル・リファインしながら進化する

3.新しいことに興味を持つこと。興味がなくなったら美容師を辞めるとき

 

>>次の記事へ 
"美容業界の先駆者に聞く「美容師として生きる」 〜その2『Double/SONS 代表 山下浩二編』〜" の記事を見る

 

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